恋人を不慮の事故で失ったドイツ人のトーマスと、夫を亡くし女手ひとつで息子を育てるイスラエル人のアナト。同じ絶望と喪失感を抱えるふたりは、エルサレムで巡り合い、運命的に惹かれ合っていく。
悲しみに暮れる男女を繊細に描いたドラマは、ケーキ作りを通して宗教的な慣習の違いをあぶり出していく。静かな感動を呼ぶ美しいラストは、国籍や文化、宗教や性差を超えてめぐり逢う男女の人間賛歌として、観る者の心を揺さぶるはずだ。
無名の若手イスラエル人監督 オフィル・ラウル・グレイツァが手掛けた本作は、低予算ながらも カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でワールドプレミアされるやいなや、観客から総立ちの拍手喝さいで絶賛されエキュメニカル審査員賞を受賞する快挙を成し遂げた。